【特撮の存在論①】ウルトラマンとは何者か⑴

はじめに 誰が特撮のアイデンティティを受け継いできたのか ヒーローとはどのような存在なのか 「宇宙人」ウルトラマン なぜウルトラマンは地球にやってくるのか 敵か味方か分からない 「助力者組織」はどこに はじめに 誰が特撮のアイデンティティを受け継…

【音楽】米津玄師「Lemon」

米津玄師 MV「Lemon」 米津玄師「Lemon」における「言わない」描写についての一考察 はじめに 米津玄師「Lemon」は野木亜紀子脚本のドラマ「アンナチュラル」主題歌としても採用され、多くのヒットチャートで1位を獲得し、カラオケでも数え知れないほど歌わ…

【音楽】ザ・スミス ”There Is a Light That Never Goes Out"

youtu.be 「ザ・スミス」というこのシンプルな名前のバンド。彼らは、80年代のイギリスを代表するオルタナティヴ・ロック・バンドだ。全メンバーが労働者階級出身で、マンチェスターにて結成された。彼らの少し後の世代ならoasisや、最近のロックバンドであ…

【書評】砂川文次「戦場のレビヤタン」

語り手・K 最近、橋本陽介の『物語論 基礎と応用』のおかげなどもあって、小説を読むときに「語り手」という問題に注意を払うことが多くなった。そうなると「今となっては」というような語り方が目に付くようになり、それだけで小説を読むのが楽しくなったり…

【書評】上田岳弘「ニムロッド」

交換の限界 ここしばらくのブームは「安楽死」と「資本主義の限界」らしい。 いわゆる「意識高い系」が「資本主義こそ最大の革命である」みたいなことを言う一方、やはり文学などの界隈からは、「資本主義の限界」ということが長らく言われてきたのだけれど…

【書評】高山羽根子「居た場所」

常にあるものに気がつかないこと とても不思議な感じがするこの小説の舞台は、大まかに三ヶ所で、まず最初は日本であろうどこかの街で、「私」の住む街。次は、その妻となった小翠(シャオツイ)が生まれ育った街。おそらくこちらは中国で、三ヶ所目は、その…

【感想】『やがて君になる』~君しか知らない、でも君はいない~

*この記事はネタバレを全く気にせずに書いたことを初めに断っておきます。苦手な方はご注意ください。 2018年秋クールのアニメの一つ、『やがて君になる』。この作品は秋クールの中のいわゆる百合枠として放映された。しかし、このアニメは単なる百合を越え…

【書評】町屋良平「1R1分34秒」

酔いしれる自意識 物語の大まかな展開について、示唆に富む記述を含む次の記事を引用したい。 この作品は、私のなかでは「自意識肥大モノ」として分類している。プロボクサーの主人公はデビューこそKOを飾ったもののその後は鳴かず飛ばずの体たらく。試合後…

【第一回座談会】2018年アニメ総振り返り③

theyakutatas.hatenablog.com theyakutatas.hatenablog.com 三ツ岩 では「シュタインズ・ゲート ゼロ」にも触れていきましょう。 葵の下 虎太郎さん、以前「シュタゲゼロ」の話を出してくれた時伏線って言ってたと思うんだけど。どの辺りの? 考察のしがいが…

【書評】『LOCUST VOL.1』

難解に書くという病 センター試験の国語では、評論文に苦しめられた。漢文を早々に仕上げた僕は、次に評論文に的を絞った。なぜなら小説文はどうにも作問者通りの解釈ができない上に、古文は何度も繰り返し読むうちに、自分なりの現代語訳を作り上げてしまっ…

【第一回座談会】2018年アニメ総振り返り②

theyakutatas.hatenablog.com 三ツ岩 先ほど少し話が出た「宇宙よりも遠い場所」(よりもい)についてもう少し伺いたいんですけど。 革新的な舞台設定、という話でしたよね。高校生4人が南極に行くという。 虎太郎 「宇宙兄弟」とか、宇宙に苦労していく、み…

【書評】鴻池留衣「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」

文学はどこに 橋本陽介『物語論 基礎と応用』の冒頭には、私たちがどんなに短い断片であろうと、そこに「物語」を見てしまうことが書かれている。野家啓一『物語の哲学』でも書かれているように、私たちは「歴史」さえ「物語」として見なしうるのだから、私…

【芸術評】 マイク・ケリー『DAY IS DONE』作品分析 —マイノリティに〈なる〉芸術—

はじめに 「#MeToo」や「LGBT」等の言葉を目にする機会が増え、あらゆる意味合いでの「マイノリティ」に関心が高まっている昨今、芸術作品におけるその表象のなされかたを読み取ることの意義は大きいように思える。本記事では、この「別のものになること」…

【第一回座談会】2018年アニメ総振り返り①

三ツ岩 では初めに軽い自己紹介を。 立月 今年はアニメをあまり見ることが出来ませんでした。誠に遺憾です。立月です。 踊るサバ 基本世間の後追いでアニメ視聴を開始する、踊るサバです。結局、生協で安定してうまいのはサバだと思います。 虎太郎 虎太郎で…

【書評】古市憲寿「平成くん、さようなら」

モノフォニックな物語として かつてロシアの文芸批評家であるミハイル・バフチンは、ドストエフスキーの小説を「ポリフォニック(多声的)」であると表した。 普通、小説を書けば、その登場人物はいずれも作者の自己投影となってしまって、予定調和的に物語…

【感想】アニメ『ゾンビランドサガ 』〜なぜゾンビがアイドルを!?〜

2018年秋アニメ『ゾンビランドサガ 』で、 「なぜゾンビがアイドルをしなければならなかったのか?」が本稿のテーマです。 TVアニメ「ゾンビランドサガ」公式サイト ゾンビが佐賀でアイドルをする!! というツッコミどころ満載な設定から、いかにして物語が…

【書評】多和田葉子『献灯使』

分からない、捉えられない 表題作の「献灯使」のページをめくると、間もなくそれが自分の知るこの世界ではないことが分かる。この物語の主人公らしき義郎がジョギングを──いや、鎖国し外来語が禁じられたこの世界では「駆け落ち」と呼ばれる行為を、借りてき…