2019-01-01から1年間の記事一覧

【書評】上田岳弘「ニムロッド」

交換の限界 ここしばらくのブームは「安楽死」と「資本主義の限界」らしい。 いわゆる「意識高い系」が「資本主義こそ最大の革命である」みたいなことを言う一方、やはり文学などの界隈からは、「資本主義の限界」ということが長らく言われてきたのだけれど…

【書評】高山羽根子「居た場所」

常にあるものに気がつかないこと とても不思議な感じがするこの小説の舞台は、大まかに三ヶ所で、まず最初は日本であろうどこかの街で、「私」の住む街。次は、その妻となった小翠(シャオツイ)が生まれ育った街。おそらくこちらは中国で、三ヶ所目は、その…

【感想】『やがて君になる』~君しか知らない、でも君はいない~

*この記事はネタバレを全く気にせずに書いたことを初めに断っておきます。苦手な方はご注意ください。 2018年秋クールのアニメの一つ、『やがて君になる』。この作品は秋クールの中のいわゆる百合枠として放映された。しかし、このアニメは単なる百合を越え…

【書評】町屋良平「1R1分34秒」

酔いしれる自意識 物語の大まかな展開について、示唆に富む記述を含む次の記事を引用したい。 この作品は、私のなかでは「自意識肥大モノ」として分類している。プロボクサーの主人公はデビューこそKOを飾ったもののその後は鳴かず飛ばずの体たらく。試合後…

【第一回座談会】2018年アニメ総振り返り③

theyakutatas.hatenablog.com theyakutatas.hatenablog.com 三ツ岩 では「シュタインズ・ゲート ゼロ」にも触れていきましょう。 葵の下 虎太郎さん、以前「シュタゲゼロ」の話を出してくれた時伏線って言ってたと思うんだけど。どの辺りの? 考察のしがいが…

【書評】『LOCUST VOL.1』

難解に書くという病 センター試験の国語では、評論文に苦しめられた。漢文を早々に仕上げた僕は、次に評論文に的を絞った。なぜなら小説文はどうにも作問者通りの解釈ができない上に、古文は何度も繰り返し読むうちに、自分なりの現代語訳を作り上げてしまっ…

【第一回座談会】2018年アニメ総振り返り②

theyakutatas.hatenablog.com 三ツ岩 先ほど少し話が出た「宇宙よりも遠い場所」(よりもい)についてもう少し伺いたいんですけど。 革新的な舞台設定、という話でしたよね。高校生4人が南極に行くという。 虎太郎 「宇宙兄弟」とか、宇宙に苦労していく、み…

【書評】鴻池留衣「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」

文学はどこに 橋本陽介『物語論 基礎と応用』の冒頭には、私たちがどんなに短い断片であろうと、そこに「物語」を見てしまうことが書かれている。野家啓一『物語の哲学』でも書かれているように、私たちは「歴史」さえ「物語」として見なしうるのだから、私…